相続したアパート、まず何を見ればいい? 修繕・売却・建て替えの判断

公開 2026年9月9日/更新 2026年9月11日

大規模修繕の施工写真

「父が持っていたアパートを引き継いだが、何がどうなっているのか分からない」——このご相談が、ここ数年とても増えています。

不動産の経験がないところに、いきなり築30年の建物と入居者がついてくる。不安になって当然です。まず何を見ればいいかを、順番に書きます。

ステップ1:書類を5つ探す

  • 建築確認済証・検査済証:構造・築年・面積が分かります。次の判断の土台
  • 賃貸借契約書(全戸分):家賃・更新時期・敷金の額
  • 管理委託契約書:管理会社に何をいくらで頼んでいるか
  • 過去の修繕の記録・見積書:いつ何をやったか。これがあるかないかで、次の判断の精度が変わります
  • 火災保険の証券:補償内容と満期。名義変更が必要です

修繕の記録が残っていないことは、正直よくあります。その場合は、建物を見れば「前回いつ塗ったか」はある程度分かります。塗膜の状態、シーリングの硬さ、防水層のトップコートの残り具合から逆算します。

ステップ2:危険なものだけ、先に確認する

いきなり全部を調べる必要はありません。人に危害が及ぶものだけ先に見てください。

見る場所 危ないサイン 放置したときのリスク
鉄骨階段・手すり 踏板の裏の錆汁、手すりのグラつき 転落事故。所有者の責任になります
外壁のタイル 浮き・ひび・欠け 剥落して通行人に当たる
ブロック塀 傾き、鉄筋の露出、控え壁がない 地震時の倒壊。名古屋市に補助制度がある場合も
天井のシミ(各戸) 入居者からの報告 雨漏りの進行。放置は信頼を失います
消防設備 点検の記録があるか 消防法上の義務。未点検は指導の対象
入居者の方に聞くのが、いちばん早いことも
「何か困っていることはありませんか」と一度聞いてみてください。雨漏り、水回りの不具合、共用部の不便——ずっと言えずにいた方が意外といます。相続の挨拶ついでに聞けば、建物の状態が一気に見えてきます。そして「新しい大家さんは話を聞いてくれる」という印象は、その後ずっと効きます。

ステップ3:直す・売る・建て替えるの判断

状況 向いている選択
築20〜30年、入居率が高い、修繕費が数百万円 直して持つ。安定した収入源になります
築30年超、空室が半分以上、修繕に1,000万円超 売却または建て替えを検討。修繕費が回収できません
相続人が複数いて、共有になっている まず売却が現実的なことが多い(共有物の管理は意見が割れます)
遠方に住んでいて、管理が難しい 管理会社に任せて持つか、売却か。放置がいちばん悪い
土地の評価が高いエリア 建て替えや、土地としての売却が有利なことも

いちばんまずいのは「何もしないまま数年」

相続直後は、やることが多くて建物まで手が回りません。それは仕方ないことです。ただ、数年放置すると、選択肢そのものが減ります。

  • 雨漏りが進み、内装まで傷んで修繕費が膨らむ
  • 入居者が退去し、空室が増えて売値が下がる(利回りで計算されるため)
  • 鉄骨階段が腐食して、塗装で済んだものが交換に(30万円→200万円)

逆に言えば、いま状態を把握しておけば、慌てて決める必要がなくなります。

税務の面も、早めに専門家へ

相続したアパートには、減価償却の引き継ぎ、青色申告、消費税など、判断が要る項目があります。修繕費と資本的支出の扱いも関わってきます。税理士の先生に早めに相談されることをおすすめします。

私たちがお手伝いできるのは建物の部分だけですが、「いま何が必要で、いくらかかるか」を数字にすることで、税理士や不動産会社との相談がしやすくなります。

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