大規模修繕の相見積もり|マンション・アパートは何社?比較表の作り方と見積書のチェック3点
公開 2026年9月9日/更新 2026年11月8日
3社から見積もりを取ったら、180万円・240万円・320万円と出てきた。同じ建物なのに、なぜここまで違うのか。──オーナー様から本当によく聞かれます。
私たちは見積もりを出す側ですが、比べられて困る書き方はしていません。この記事では、比較のしかたを施工会社の側から正直に書きます。
まず、何社取るべきか
3社が目安です。2社だと「どちらが普通なのか」が分かりません。5社を超えると、現地調査の立ち会いだけで疲れてしまい、判断が雑になります。
選び方は、タイプを分けること。大手・地元の専門店・知り合いの工務店、のように性格の違う3社にすると、価格帯の幅が見えます。同じタイプを3社集めても、似た金額が並ぶだけです。
見積書で見るべき3つのこと
① 数量(㎡・m)が書いてあるか
「外壁塗装工事 一式 1,800,000円」では、比べようがありません。「外壁塗装 430㎡ × 3,200円 = 1,376,000円」と書いてあれば、他社と数量も単価も並べられます。
数量が書けないのは、現地でちゃんと測っていないからです。足場の掛け面積、外壁の塗り面積、シーリングの長さ(m)は、測れば必ず出ます。
② 塗料の商品名と、塗る回数
「シリコン塗料」ではなく、メーカー名と商品名が書いてあるか。同じ「シリコン」でも、耐用年数が8年のものと15年のものがあります。
そして「下塗り・中塗り・上塗り」の3回塗りと明記されているか。安い見積もりは、ここが2回になっていることがあります。塗り終わった壁を見ても、2回か3回かは分かりません。
③ シーリングが「打ち替え」か「増し打ち」か
これがいちばん差が出ます。
- 打ち替え=既存のシーリングをカッターで撤去してから、新しく充填する(900〜1,300円/m)
- 増し打ち=古いものの上から重ねる(400〜600円/m)
増し打ちは半額以下ですが、下の古いシーリングが切れれば、上に重ねたものも一緒に動いて切れます。サッシまわりなど、構造上どうしても増し打ちになる部分はありますが、外壁の目地は打ち替えが基本です。ここが「一式」で書かれている見積もりは、要注意です。
① 塗る回数を減らしている ② シーリングを増し打ちにしている ③ 下地補修を「別途」にして、着工後に追加請求する。
③がいちばん怖いパターンです。契約時180万円だったのが、足場を組んで「ひび割れが想定より多かった」と言われ、最終的に250万円になる。下地補修が見積もりに入っているか、入っていないなら追加はいくらまでかを、契約前に必ず確認してください。
金額以外で比べるべきこと
- 建設業許可を持っているか(500万円以上の工事には必要。番号を出せるか)
- 職人が自社か下請けか(下請けだと中間マージンが乗り、指示も伝わりにくい)
- 入居者対応を誰がやるか(挨拶・掲示・問い合わせ。オーナー任せの会社は多い)
- 保証書が出るか、年数は何年か、何が保証対象か
- 工事中の報告があるか(週1回の写真報告があると、遠方でも安心です)
私たちが相見積もりを歓迎する理由
数量と単価を全部書いて出すので、比べられて困ることがありません。むしろ他社様の「一式」見積もりと並べていただくと、何が含まれていて何が含まれていないかがはっきりします。
そのうえで「他社さんのほうが条件がいい」と判断されたなら、それで構いません。無理に契約をお願いすることはしません。
「この見積もり、妥当ですか?」というご相談も承ります。数量の抜けや、増し打ちになっている箇所を指摘します。もちろん無料で、そのまま他社様にご発注いただいても構いません。
分譲マンション(管理組合)の相見積もりは、進め方が違います
アパートや賃貸マンションはオーナー様お一人で決められますが、分譲マンションの大規模修繕は、管理組合で決めるため、相見積もりの取り方にも決まった型があります。主な方式は3つです。
| 方式 | 進め方 | よいところ | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 設計監理方式 | 設計事務所・コンサルタントが調査し、仕様書を作って施工会社を募集。見積もりを比べて選ぶ | 同じ仕様書で見積もるので、比較しやすい | 設計・監理の費用がかかる。コンサルタント選びが大事 |
| 責任施工方式 | 施工会社が調査から工事まで一貫して担当。複数社に調査と提案を頼んで比べる | 早い。費用を抑えやすい | 各社の提案内容がばらばらになりやすく、比較に手間がかかる |
| 管理会社主導 | 管理会社が施工会社を手配する | 理事会の手間が少ない | 見積もりの相手が管理会社の取引先に限られがち |
国土交通省も2017年に、一部の設計コンサルタントが施工会社からバックマージンを受け取り、特定の会社が選ばれるように誘導していた事例について注意を呼びかけています。どの方式でも、見積もりの中身を管理組合自身が読めることがいちばんの防御になります。
管理組合での一般的な流れ
- ① 劣化診断(建物の状態を調べる)
- ② 修繕委員会などで、工事の範囲と仕様を決める
- ③ 同じ仕様書で、3社程度に見積もりを依頼(提出まで2〜3週間が目安)
- ④ 見積もりの比較と、候補の会社へのヒアリング
- ⑤ 総会で決議(建物の形や機能を大きく変えない大規模修繕は、普通決議で決めるのが一般的。管理規約も確認)
- ⑥ 契約・入居者への説明会・着工
見積もりの条件をそろえる:依頼するときに渡すもの
見積もりの金額が2倍違うとき、多くの場合は各社が別々の工事を想定しているのが原因です。依頼の段階で次の条件をそろえると、金額の差が「価格の差」だけになります。
- 工事の範囲:外壁・屋上防水・バルコニー防水・鉄部・シーリング・共用廊下(長尺シート)など、どこまでやるか
- 仕様:塗料のグレード(シリコン・フッ素・無機など)、シーリングは打ち替えか、防水の工法
- 数量の根拠:図面があれば全社に渡す。なければ各社に実測を依頼する
- 入居者対応の範囲:挨拶・掲示・駐車場や洗濯物の調整を、どこまで施工会社に任せるか
- 保証年数と点検:何を何年保証するか、工事後の点検はあるか
- 工期の希望と、提出期限
比較表の作り方(そのまま使えます)
届いた見積書を、次の表に書き写してみてください。空欄になる行がある会社は、その工事が「一式」に含まれているか、入っていないかのどちらかです。必ず確認してください。
| 項目 | A社 | B社 | C社 | 確認するポイント |
|---|---|---|---|---|
| 仮設足場 | ㎡数と単価。メッシュシート込みか | |||
| 高圧洗浄 | ㎡数 | |||
| 下地補修 | 数量が入っているか。追加になる条件 | |||
| シーリング | 打ち替えか増し打ちか。m数 | |||
| 外壁塗装 | 塗料の商品名・塗る回数・㎡数 | |||
| 鉄部塗装 | ケレンの程度、サビ止めの種類 | |||
| 屋上・バルコニー防水 | 工法(ウレタン・シートなど)と㎡数 | |||
| 共用部(長尺シートなど) | 範囲と㎡数 | |||
| 諸経費・現場管理費 | 総額の何%か | |||
| 合計(税込) | ||||
| 保証 | 部位ごとの年数 | |||
| 工期 | 入居者への影響 |
見積もりを断るときは
相見積もりは、施工会社にとっても当たり前のことです。断るときは、「今回は他社にお願いすることにしました」と一言伝えるだけで十分です。理由を細かく説明する必要はありません。連絡がないまま時間がたつと、何度も確認の電話が来ることになるので、早めに伝えるほうがお互いのためです。
よくある質問
Q. 相見積もりを取ることを、各社に伝えたほうがいいですか?
A. はい、伝えて構いません。むしろ「同じ条件で比べたいので、数量と単価を書いてください」とお願いすると、比べやすい見積書が集まります。
Q. 他社の金額を伝えて、値下げを頼んでもいいですか?
A. 金額だけを伝えて値下げを迫ると、見えないところ(塗る回数や下地補修)で帳尻を合わせる会社も出てきます。仕様をそろえたうえで、「この項目の単価はなぜ高いのか」を聞くほうが、適正な価格に近づきます。
Q. 見積もりは無料ですか?
A. 当社は、現地調査・診断報告書・内訳見積まで無料です。他社の見積書を見せていただき、内容を確認するご相談も承ります。
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