12条点検は名古屋のマンション・アパートも対象? 義務・罰則・報告時期のすべて

公開 2026年9月9日/更新 2026年9月19日

大規模修繕の施工写真

ビルやマンションのオーナー様から「管理会社に打診調査をすすめられたが、本当に必要なのか」というご相談をよくいただきます。

まず結論からお伝えします。名古屋市の場合、ふつうの賃貸マンション・アパートは、建築基準法12条の定期報告の対象ではありません。ただし、対象でないことと「やらなくていい」ことは別です。順番に説明します。

名古屋市が定期報告の対象にしている建物

建築基準法12条の定期報告は、国が政令で一律に決めている分と、各自治体(特定行政庁)が地域の実情で追加指定する分の2段構えになっています。だから「名古屋市はどうか」を見ないと答えが出ません。

名古屋市が指定している用途は次のとおりです(建築物の定期調査報告)。

用途 名古屋市の指定
共同住宅 サービス付き高齢者向け住宅に限る
寄宿舎 サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る
事務所その他これに類する用途 対象
ホテル、旅館 対象
病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、就寝用途の児童福祉施設等 対象
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 対象
百貨店、マーケット、展示場、飲食店、物品販売店舗など 対象
体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、水泳場など 対象

つまり——

  • ふつうの賃貸アパート・マンション → 対象外
  • サービス付き高齢者向け住宅 → 対象
  • テナントビル(事務所) → 対象(規模の条件あり)
  • 1階が店舗・飲食店の建物 → 店舗部分の規模によっては対象

なお、対象用途であってもその用途の床面積の合計が200㎡以下かつ階数2以下の建築物は対象外です。階数や面積の条件は用途ごとに違うので、ご自身の建物が該当するかは名古屋市の窓口で確認してください。

確認先:名古屋市住宅都市局 建築指導部 建築安全推進課
電話 052-972-2923
建物の用途・階数・延床面積を伝えれば、対象かどうか教えてもらえます。管理会社が入っている場合は、管理会社が把握していることも多いです。

報告の時期と頻度(対象になる建物の場合)

項目 内容
頻度 3年ごと(用途により異なる場合あり)
報告期間 4月〜10月末(用途により6月〜12月末)
誰が調査するか 一級建築士・二級建築士、または特定建築物調査員の資格者
誰が報告するか 建物の所有者または管理者
提出先 名古屋市(特定行政庁)。電子申請も可

新築の建物は初回報告が緩和される仕組みがあるので、いつから始まるかは名古屋市の早見表で確認するのが確実です。

報告しないとどうなるか

建築基準法101条により、100万円以下の罰金です。対象は「第12条第1項もしくは第3項の規定による報告をせず、または虚偽の報告をした者」。報告しないことだけでなく、ウソの報告も同じ罰則です。

実務上は、いきなり罰金になるわけではありません。報告がないと特定行政庁から通知・督促が来て、それでも応じない場合に是正指導、という流れが一般的です。ただし法律上は罰則が定められているという事実は知っておいてください。

そして罰金より重いのは、事故が起きたときの責任です。次の項目で説明します。

対象外でも、やる意味があります

ここが本題です。名古屋市でふつうの賃貸マンション・アパートが定期報告の対象外だとしても、タイルが落ちる危険がなくなるわけではありません。

民法717条により、土地の工作物(建物)の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を与えた場合、その責任を負うのは所有者です。タイルが落ちて通行人に当たれば、法律上の責任を問われるのは建物のオーナー様です。

この責任は、定期報告の対象かどうかとは関係ありません。対象外の建物でも、同じように責任が発生します。

逆に言えば、定期的に調査して、記録を残し、必要な補修をしているという事実が、万一のときに「適切に管理していた」証拠になります。賃貸オーナーの点検義務もあわせてご覧ください。

外壁の全面打診が必要になるのは、いつか

定期報告の対象になる建物では、外壁の調査方法も決まっています。平成20年国土交通省告示第282号に、こう定められています。

調査 頻度
手の届く範囲の打診等 おおむね6ヶ月〜3年に一度
落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等 おおむね10年に一度

具体的には、竣工・外壁改修・前回の全面打診のいずれかから10年を超え、かつその後3年以内に全面打診を実施していない場合に、全面打診が必要になります。

つまり「築10年でいきなり」ではなく、10年を超えたあと、次の定期報告までにという考え方です。

対象外の建物でも、この10年という周期は目安として使えます。大規模修繕の周期とちょうど重なるので、足場を組むタイミングでまとめてやるのが合理的です。

調査のやり方と費用

方法 内容 費用の目安
打診棒による全面打診 タイルを1枚ずつ叩き、音の違いで浮きを判定。図面に位置と枚数を記録 200〜500円/㎡
(足場別)
赤外線調査 外部から温度差で浮きを推定。足場が要らない 150〜400円/㎡
目視+部分打診 手の届く範囲と、目視で怪しい箇所だけ 簡易的
(法定調査の代わりにはならない)

赤外線は足場が不要で安いのですが、天候や日射の条件に左右されます。また、外壁の色が濃い面・日陰になる面は精度が落ちます。法定の全面打診の代替として認められる範囲も限られるため、確実なのは打診棒です。

大規模修繕で足場を組むなら、そのときに全面打診をやってしまうのが一番安上がりです。調査だけのために足場を組むと、それだけで50〜120万円かかります。足場代の計算方法もご覧ください。

浮きが見つかったら、どう直すか

状態 工法 単価
浮いているが割れていない エポキシ樹脂の注入+アンカーピンニング(ピンで下地に固定) 2,500〜4,000円/箇所
割れ・欠けがある タイルを撤去して張り替え(既存と同じタイルの入手が課題) 8,000〜15,000円/㎡
広範囲に浮いている タイルを撤去して塗装仕上げに変更、またはタイル張り替え 面積により大きく変動

注意点として、築30年以上の建物は、同じタイルがもう製造されていないことがあります。その場合は近い色を探すか、面ごとに張り替える、あるいは全面を塗装仕上げに変える判断になります。ここは事前に調べておかないと、工事の途中で計画が変わります。

タイル面を塗りつぶしたくない場合は、透明の撥水剤で水の侵入を抑える方法もあります。中村区のマンション(712万円)では、1階のタイル面82㎡に撥水剤を塗布しました。

「浮きが◯箇所」と数で出します

当社の調査では、浮いているタイルの位置と枚数を図面に落として、写真と一緒にお渡しします。「かなり浮いています」ではなく「128箇所」と数で出すので、補修費用も数量×単価で計算できます。他社様との比較にもお使いいただけます。

数量が入っていない見積書は、あとから増額される余地が残ります。相見積もりで見るべき3つのところもあわせてどうぞ。

調査だけのご依頼も承ります
「補修するかどうかは、結果を見てから決めたい」で構いません。調査結果をお渡しして、そのまま他社様に発注いただいても問題ありません。まずは現状を数字で把握するところからです。診断とお見積もりは無料です。

※ この記事は2026年9月時点の名古屋市の制度をもとにしています。対象の指定や報告時期は変わることがあるので、実際の手続きの前に必ず名古屋市住宅都市局建築指導部建築安全推進課(052-972-2923)でご確認ください。法令の解釈について個別の判断が必要な場合は、建築士または行政書士にご相談ください。

診断・お見積りは無料です 部位ごとに「あと何年もつか」を判定した報告書と、数量・単価入りの内訳見積をお渡しします。その場で契約を迫ることはしません。
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